有識者よりコメントを頂きました。
2010年1月 ご法話
宗教信じてなにかいいことありますか?
◎宗教を信じる人は2割、でも8割がお参り?
読売新聞が行った「宗教」本社全国世論調査が平成17年9月2日号に掲載されました。冒頭の文章はその記事の前文です。
その中で特に気になったことがありました。
A.あなたは、何か宗教を信じていますか。との問いに4分の3の人が「信じていない」
B.あなたが幸せな生活を送る上で宗教は大切だと思いますか。との問いに6割の人が「大切だと思わない」
C.宗教的行為は何をしますか。との問いに8割が盆・彼岸の墓参りをあげ、7割が初もうでとそれぞれ答えています。
養老孟司・東大名誉教授と石井研士・国学院大教授は記事中、次のような分析をしています。
養老教授「日本人は自分たちが無宗教だと思っているが実は宗教心はある。世間に合わせようとするから特定の宗教を信じているとは言いづらい(要旨)」と分析し、石井教授は「初もうでに行くのは単なるイベントになっている。(Bの結果から)宗教はどの国でも精神文化の中核に位置する。それに敬意を払わない社会は怖く、薄ら寒い気がする(要旨)」と懸念しています。
◎仏や浄土は死後の世界、今の私には関係無〜い!・・・・ それでいいのかな??
みなさんは、この調査の結果にどんな感想をお持ちになったでしょうか。お坊さんとして決して喜ばしい結果ではありませんが、この数字はそれなりに現代の日本人の宗教感覚を表しているのでしょう。石井教授の「宗教に敬意を払わない社会は怖く薄ら寒い」という懸念は本当に憂国なことです。
世界を見れば、現在も各地でテロや戦闘が繰り返されています。その原因の一つが「宗教」といわれますが、正しくは「間違った宗教の用い方」と言ったほうがいいでしょう。
ある本によれば宗教とは「人間として最高の境地に立つための教え」と説明がありました。
「人として最高の境地」を仏教では「成仏」といい、その人たちが住み、営む世界を「浄仏国土=浄土」といいます。仏教・成仏・浄土などといわれると、なじみの無い難しい言葉で、自分たちとは無関係なことと考えてしまいがちです。
それがBの回答の一因とも思えます。そこで「成仏」を「幸せ・満足」、「浄土」を「苦しみの無いいつも楽しい世界」、「仏教」を「それに至るための手引き、今風に言えばマニュアル」と言い換えて見て下さい。すこしは距離が縮まりましたか?
人類は「幸せになるため、満足するため」にそれぞれの時代ごとに英知を結集して文明を進化さてきました。
「?」が「!」と解明され、不便だったことが便利になり、我慢してきたことが快適となり、大変暮らしやすい世の中になりました。
しかし、多くの場合それらを手に入れた瞬間から「ありがたい」のレベルは下がり続け、やがて「当たり前」になり、さらに次の「ありがたい」を求め始めます。それが文明進化の原動力ではあるのですが、残念ながら私たちの「心・魂」はそれに比例しないで進化できずにいるのではないでしょうか。
◎どんな人のこころの中にも仏さまが・・・ ただ元気レベルに差があります
日蓮宗を開いた日蓮さまは「今、日本は人の心も社会も乱れた時代である末法に入った。これからは法華経でなければ救われない」と法華経を弘めようと鎌倉時代に決意されました。
当時よりはるかに文明が進んだ平成の今も目に見える末法も、目には見えづらい「心の末法」もまだ解決していないのです。
しかし、養老教授の分析のごとく、私たちには「宗教心はある」のです。これは「私の心の中に仏さまがいらっしゃる」ということです。
その仏さまの効果を墓参りやイベントの初もうでだけに止めておくのはとてももったいないことです。もっと心の中の仏さまに活躍していただき、心の末法を転換して先ずは自分が幸せな楽しい毎日を送り、そして家族、社会全体にその輪を広げて参りましょう。
それが日蓮さまのおっしゃる「成仏」であり「浄土」なのです。
ではどうすれば「心の中の仏さま」が元気に活動してくださるのでしょうか。まずは縁のあるお寺さま、お墓にお参りしましょう。具体的にはご先祖さまがお世話になっているお寺さま(そこ菩提寺 ぼだいじ といいます)にお参りされるのが一番いいでしょう。菩提寺さまはどこの何宗なのか?お墓はどこに?というかたもあるでしょうが、それを調べようという気持ちを持っただけでもあなたのこころの中の仏さまの元気レベルはアップします。さらに具体的な行動を起こせばさらにレベルアップ確実です。
「私は分家だから先祖はいない」なんて言わないでください。誰にでも必ず親がいるように先祖は必ずいます。ただ慣習上、先祖のお墓を継承していないというだけのことです。
現代を生きる私たちは花です。次世代の命は実です。花も実もそれだけでは存在できません。葉、枝、幹があって初めて生まれるものです。でももっと大切なところがあります。目には見えない根=ご先祖・仏さまです。つまりご先祖・仏さまは根、祖父母、両親、親族は幹、枝、葉です。
その「根=ご先祖・仏さま」にもっと元気になっていただくことが自分の仏さまの元気レベルアップに直結し自分が幸せになるということなのです。それが仏さまのお教、仏教です。
◎仏教各宗派、どれがいいのかな
現代では「信教の自由」が保障されています。基本的には菩提寺さまの宗派に限らず何宗を信仰されても、仏教なれば全てお釈迦さまの教えを基にしていますので同じようですが、その宗派を最終的にはご縁でしょうか。音楽といっても、民謡、演歌、クラッシック、ジャズ、歌謡曲などなど種々あるようにどのジャンルと縁を結ぶか? それは自分で見つけるしかないのでしょう。
そこでお勧めするのが、どこのお寺でもお坊さんでもかまわないので「こちらでは何を教えていただけるのですか」とか「○○宗のことを分かりやすく教えてください」など質問をしてみてください。
その対応、答えに何かしら興味をもったらそれがご縁の始まりかもしれません。
その縁が深まれば深まるほど「心の中の仏さま」のレベルが上がり、あなたが仏さまに代わって世のため、人のため、あなたにしかできない役割が与えられます。
やがてそれは世界を、日本を、社会を、家庭を、そして自分を幸せに導く第一歩になることでしょう。